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就業規則の作り方 その13「賃金規程〜総則」
賃金規程〜総則

就業規則の賃金に関する項目は、絶対的記載事項であり必ず記載しなければならない事項になります。
賃金の中でも退職金や臨時の賃金、最低賃金額は相対的必要事項となりますので定める場合は記載する必要があります。
賃金規程、あるいは給与規程として、就業規則とは別規程で定めるのが一般的です。別に定めた場合も就業規則の一部になりますので所轄労働基準監督署へ届出が必要になります。
第○条(賃金) 社員の賃金に関しては別途賃金規程を適用する
就業規則と同様に目的や適用範囲、それ以外にも支払形態や賃金体系なども明確化しておく必要があり
ます。 特に適用範囲については、パートタイマーやアルバイトなど通常の社員とは異なる労働者は、
正社員とは別の賃金規定を定めることで、労使トラブルを防ぐことにもつながります。
■目的
賃金規程の目的や適用範囲などを規定します。第○条(目的)
1.この規程は就業規則に基づき社員の賃金について規定したものである。
2.この規程は、パートタイマー、アルバイト、契約社員および嘱託社員には適用しない。
3.この規程に定めのない事項は、法令の定めるところによる。
■賃金体系
会社の賃金・手当にはどのようなものがあるかを洗い出し、分かりやすく記載します。■賃金の支払および控除
賃金の支払いには労働基準法で定められた5つの原則に従う必要があります。月給や日給、時給であっても適用になります。
1.通貨払いの原則:賃金は通貨で支払わなければならない。
2.直接払いの原則:賃金は直接労働者に支払わなければならない。
3.全額払いの原則:賃金はその全額を労働者に支払わなければならない。
4.毎月1回払いの原則:賃金は原則として毎月1回以上支払わなければならない。
5.一定期日払いの原則:賃金は原則として一定期日を定めて支払わなければならない。
所得税・地方住民税の源泉徴収や社会保険料、厚生年金保険、雇用保険料の被保険者分については
労使協定がなければ給料から控除することはできません。
第○条(賃金の支払および控除)
賃金は、全額通貨で社員に直接支給する。ただし、次の各号に掲げるものは賃金から控除する。
(1)源泉所得税
(2)住民税
(3)健康保険料・介護保険料
(4)厚生年金保険料
(5)雇用保険料
(6)その他賃金から控除することについて、労使協定を締結した事項
■賃金の支払方法および支払日
賃金支払の5つの原則に則り、賃金の支払い方法および支払日を明確化します。第○条(賃金の支払方法および支払日)
1.賃金は、社員の同意を得た上で本人名義の預貯金口座に振り込むものとする。
2.賃金の計算期間は、当月20日をもって締め切り。当月末日に支払う。ただし、支払日が休日にあたるときは、その前日に支払う。
■非常時支払い
労働基準法では使用者は労働者が出産、疾病、災害など非常の場合の必要な費用を労働者が請求したときには、支払期日前であっても既往の労働に対する賃金を支払わなければならないと規定しています。これを賃金の非常時支払いと言います。第○条(非常時払い)
次の各号の一に該当するときは、社員の請求により、賃金支払日前であっても既往の労働に対する賃金を支払う。
- 社員本人または社員の収入によって生計を維持する者が、結婚、出産、 疾病、災害または死亡したため、これに関する費用が必要なとき
- 社員本人または社員の収入によって生計を維持する者が、やむを得ない理由により1週間以上にわたって帰郷するため、これに関する費用が必要なとき
■日額・時間額の計算
遅刻や早退をしたときや欠勤をしたとき、賃金から控除する額が明確になっていないのは労使トラブルの元です。そこで就業規則に日額・時間額の計算を規定します。第○条(日額・時間額の計算) 賃金の日額および時間額の計算は次の式による。
日 額 = 基準内賃金 × 12 ÷ 年間所定労働日数
時間額 = 基準内賃金 × 12 ÷ 年間所定労働時間数
■平均賃金
平均賃金は算定する事由(解雇予告手当や休業手当)の直前の3か月の賃金総額を合算して暦日数で除した金額とします。平均賃金の計算式は労働基準法に規定されています。
第○条(平均賃金)
1.解雇予告手当や休業手当の基礎となる平均賃金の計算は、直前の賃金締切日より起算した3カ月の賃金
総額をその期間の総日数で除した額とする。ただし、ここでいう賃金総額には、臨時に
払われた賃金および賞与は含まれない。
平均賃金=_直前の賃金締切日より起算した3カ月間の賃金総額÷3カ月間の総日数
2.入社後3カ月に満たない者に関しては、入社日から当該算定事由の発生した日までの期間の総賃金
総日数で計算する。
■賃金の減額
賃金の減額は不利益変更となりますので、従業員の合意があれば可能になります。従業員の合意がない場合でも変更後の就業規則が従業員に周知されており、合理的なものであれば可能です。
従業員の合意がなく使用者が一方的に下げるのは無効となります。
第○条(賃金の減額)
1.社員が欠勤、遅刻、早退および私用外出をしたときは、その日または時間につき、前項の計算方法によって計算した額を減額して支給する。ただし、社員が賃金計算期間のすべてにわたって欠勤したときは、いかなる賃金も支給しない。
2.前項の規定に関わらず、次の各号の一に該当する場合は、賃金の減額は行わない。
(1)年次有給休暇または特別休暇を取得した場合
(2)裁判員制度に参加するための休暇を取得した場合
(3)欠勤することにつきやむを得ない事情によるものと会社が認めた場合
3.前々項の規定に関わらず、会社都合により会社を休業させる場合には、平均賃金の60%を支給する。
欠勤、遅刻、早退、私用外出した場合の賃金の控除額について規定し、また、会社を休んでも賃金の控除がされない場合について規定しておきます。有給扱いである場合と無給扱いの場合を明確化することにより、トラブル防止を図ります。
■退職時の支払い
従業員が退職または死亡したときの賃金の支払いは、請求のあった日から7日以内に賃金の支払いや労働者の権利に属する金品(積立金、保証金、貯蓄金等)の返還をしなければなりません。退職金は就業規則で決められた支払時期に支払えばよいとされていますので7日以内に支払う必要はありません。
第○条(退職時の支払い)
社員が退職または死亡したことにより、当該社員または遺族から請求があった場合は、請求があった日か7日以内に賃金を支払い、その他当該社員の権利に関する金品を返還する。
■端数処理
賃金を計算すると、どうしても端数が出ます。この端数について、会社の賃金計算上どのような扱いにするのか疑義が生じないように明確化しておきましょう。第○条(端数処理)
1.賃金の日額および時間額の計算において、1円未満の端数が生じるときは、四捨五入の処理を行う。
2.時間外手当、深夜手当および休日手当の額の計算において、1時間当たりの金額に1円未満の端数が生じ
るときは、四捨五入の処理を行う。
なお、一律切り捨てのような端数処理は、賃金の全額払いの原則に違反するため、認められません。端数処理として認められるのは次のような方法です。
●割増賃金計算における端数処理
(1)1カ月の時間外労働、休日労働及び深夜労働の各時間数ごとの合計に1 時間未満の端数がある場合 に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。(2)1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
(3)1カ月における時間外労働、休日労働、深夜労働の各々の割増賃金の総額に1 円未満の端数が生じた場合、(2)と同様に処理すること。
●1カ月の賃金支払額における端数処理
賃金支払いの5原則について先ほど述べましたが、次の事例に関しては処理することが認められています。(1)1カ月の賃金支払額(必要な控除等を行った後の額)に100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うこと。
(2)1カ月の賃金支払額に生じた1000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。
ただし、1か月の賃金支払額における端数処理について、就業規則にその旨を定めることが必要です。
2022/12/22

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