セミナー
事業承継セミナー

事業承継に必要な相続の基礎知識Part1
今回のセミナーでは、事業承継を考えるうえで必要不可欠な、相続の基礎知識についての内容です。経営者のおもいを叶える事業承継を実現できます。
資産の圧縮や養子縁組、贈与などの方法を考える前におもいをしっかり確認してもらいます。
対象者
事業承継で何をすればよいのかわからなくなっている方色々な方法を考えているがどうしたらよいかわからない方
ポイント
おもいを中心にとらえて、それをかなえる方法を解説します。思いを実現するために、改正された民法や新しい信託を事業承継に活かす賢い使い方を教えます。
対策や手段を考える前に「おもい」を確認
自社株対策をどうしよう・・・、生前贈与は暦年贈与、それとも精算課税・・・・?事業承継は、会社という財産の承継ですが、相続による事業承継は、会社という財産と社長自身の個人の財産の両方を承継することになります。
生前に引退を完了することができれば、相続と事業承継は別に考えるということも可能かも知れませんが、本当にそれで安心ですか?
事業資産の贈与はすでに相続問題のスタートです。
社長自身が所有する自社の株式や不動産などの事業に必要な資産を後継者に贈与することは、よく行われている事業承継の方法です。ところが、このような贈与は、「特別受益」と呼ばれ、相続が発生すると、すでに後継者は生前に財産分与を受けていたものとして、遺産の分割が行われることになるのです。
この「特別受益」が大きいと遺留分侵害額請求が起こるかもしれません・・・
2019年7月1日から特別受益と遺留分請求の扱いが変わった
【特別受益】これまでは、遺留分の計算上算入される(減殺の対象になる)贈与(生前贈与)の範囲につい て、相続人に対するものか否かで異なる取扱いがされています。
すなわち、相続人以外に対する 贈与は、原則として相続開始前の1年間にされた贈与に限られるが、相続人に対する贈与のう ち特別受益にあたるものは、特段の事情がない限り、全ての期間の贈与が算入されるとされてきました。
改正では、この相続人に対する贈与(特別受益にあたるもの)について、相続開始前10年間にされたものに限って算入するとし、現行の取扱いよりその範囲を限定することとされました。
【遺留分請求】
これまでは、遺留分権利者が贈与等を受けた者に対して遺留分を求める請求(遺留分減殺請求) をすると、遺留分を侵害している贈与などはその侵害額の限度で効力を失い、原則として減殺 された財産はその限度で遺留分権利者のものとなるとされ。
贈与された財産そのものを返還する(現物返還)のが原則で、金銭の支払い(価額弁償)は例外という位置づけになっています。
※遺留分権利者とは、被相続人の配偶者、直系卑属(子・孫など)、直系尊属(両親・祖父母など)
改正では、この取扱いを抜本的に見直し、遺留分権利者は、遺留分侵害額に相当する金銭 の支払いのみを請求できることとされました(遺留分侵害額請求)。
金銭請求に一本化されたことで、 不動産などをめぐる複雑な共有関係が生じなくなるため、遺留分に基づく権利が主張しやすくなり、権利の処理も簡単になることが期待できます。
なお、金銭で支払わなければならないことに配慮して、贈与等を受けた者は、この侵害額の支払いを一定期間猶予してもらうよう、裁判所に請求できることとされています
事業承継では「経営権」「財産権」の2つの権利を引き継がなくてはなりません。
1.経営に関する権利の承継組織運営に必要な権限とノウハウ。人事、経理、営業、職制、服務など企業の運営に必要な管理上の権限や、経営者として必要な業務知識、人脈、リーダーシップ、企業理念などの承継です。
【経営権における承継先のメリット、デメリット】
・親族
経営者自身の安心感と社内外で受け入れられやすい反面、古参社員から不満が生じるリスクがあります。
・従業員、役員
事業内容に精通しているため後継者教育の時間を短縮でき、スムーズに引継げるが、選定の際にほかの従業員からの反発を受けるリスクがあります。
・第三者(M&A)
売却先の事業との相乗効果により会社のさらなる発展を望めるが、条件に合う相手を見つける難易度、交渉をまとめる難易度、煩雑な手続き、企業文化の融合など、課題も多くなります。
2.財産に関する権利の承継
自社株や事業用財産を所有する権利。「売買」「贈与」「相続」のいずれかの方法で譲渡します。
財産権の承継が行われないと「企業内での発言権の弱体化」、「自身が亡くなった際の相続争い」といった問題に発展しかねません。
【財産権における承継先のメリット、デメリット】
・親族
財産権の相続が可能なため資金負担を軽減しやすい反面、相続人が多数いる場合は株式の集約や親族間で経営上の対立が生じることがあります。
・従業員、役員
経営面ではメリットは多いが、後継者候補に株式取得の資金が不足しているケースが多く、負債の連帯保証人変更は手続きが容易でありません。
・第三者(M&A)
現経営者は株式などの売却利益を得ることができ、譲受先に負債を引き継いでもらえるが、アドバイザーに依頼した際は仲介手数料が発生します。
安定した経営には一定の株式を保有することが必要となる。
社長の権限を強めるためにも3分の2以上の株式を保有すべきであり、可能ならば100%を目指したいところです。株式の継承方法としては①売買②贈与③相続の3つがあり、それぞれ特徴があります。
①売買
生前に行うことができ、売買は相続でもめる心配や地位の安定といった利点があります。しかし後継者には株を買取る為の資金力が必要となります。
課税方法:譲渡する側(言株主)に一律約20%の課税
②贈与
生前に行え、資金調達の必要がありません。ただし110万円以上の贈与は贈与税がかかり、金額が上がるほど税率も高くなります。
課税方法:基礎控除110万円を引き、残りの額に応じて10~55%*を課税
③相続
対象は配偶者や子など親族に限定されます。相続税は基礎控除額が高く、贈与税より税率が低いため親子間の事業承継にはよく用いられます。しかし、後継者に親族が多い場合は相続の対象外の者であっても遺産分割時にもめる可能性があります。
スムーズな事業承継には、自社株式に関する「税負担の軽減」「買い取り資金の確保」が大切であり、
①株価の引下げ②贈与の活用③納税猶予④遺留分対策
といった対策が必要となってきます。
株価の計算には①類似業種比準価額:上場株価と比較して自社の株価を算定
②純資産価額方式 :純資産の積み上げにより株価を算定
③併用方式 :①と②の併用
の3つの方式があり、それぞれの計算方法は会社の規模と業種によって決定されます。
自社株の株価引下げ策
自社の株価引下げには①資産整理②利益圧縮が有効です。①資産整理は資産そのものを減らして株価を引下げる方法です。不要な資産、マイナスの資産、実態とかけ離れている、放置されたままの資産等を処分して株価評価を引下げます。
②利益圧縮は経費を増やして利益を減らす方法で、よく用いられるのは「退職金」の活用です。適正な額の退職金は全額を損金に算入でき、株価を一気に引き下げることが出来ます。退職金は高額なほど利益圧縮には効果的となりますが、不当に高い退職金は損金算入が認められない場合がありますので注意が必要です。
贈与を活用した引継ぎ
贈与税控除の年間110万円を利用して長期に渡って110万円ずつ贈与していけば無課税で贈与が出来ます。このような1年間の贈与の合計額を基に贈与税額を計算する課税方法を「暦年贈与」といいます。また、基礎控除額を超えて贈与税がかかっても相続税より負担が軽くなるケースがありますので、検討する必要があります。また、贈与には暦年課税の他に「相続時精算課税制度」があります。これは子、孫への贈与を対象とし、基礎控除額を生涯累計2500万円と決めることで、2500万円までは非課税にするというものです。2500万円を超えた分については一律20%が課税されます。
この制度の適用を受けた財産は相続税の計算をする際に相続財産に全て合算されます。
・早めの財産分割・価値の上がりそうな資産・収益財産を子や孫にに帰属させたい
といった場合や、自社株価算定の基準時は相続時ではなく贈与時である為、自社株価の上昇が予想される場合などはメリットが期待ですます。
しかし、相続時精算課税制度は使用すると暦年課税に戻れなくなる点は注意が必要です。
贈与税・相続税の納税猶予を利用する
「中小企業経営承継円滑化法」において、株式承継にかかわる贈与税・相続税の納税猶予が制定されています。これは事業承継に伴う贈与・相続時の納税資金が用意できない場合の制度であり、一定条件を満たすことで贈与税または相続税の80%(特例で100%)が納税猶予される制度です。
納税猶予は一度認定されると、相続発生時に大臣認定の取得によって引続き相続税の納税猶予として引継ぐことが可能となります。これにより同族内で事業を承継する意思があれば、永遠にこの制度を利用して納税を猶予し続ける事も可能となります。
遺留分対策
財産権の承継では、株式が必要以上に分散しない様な対策を講じなければなりません。
後継者とは別に相続人がいる場合、株式は後継者が相続し、会社に関係のない相続人には現金や非事業用の不動産、自宅などを与えるといった対策が有効となります。
また、事業用に使用している不動産を会社ではなく個人で所有している場合、その不動産を後継者以外の相続人に渡す可能性も考慮しなくてはなりません。
さらに株式の評価が高額で、後継者が相続税の支払いが出来ないという事態にならぬよう、後継者には現金や生命保険金などを利用して納税資金を残すことも可能です。
遺留分とは?
相続において特に問題になるのが「遺留分」の問題です。「遺留分」とは相続人に法定相続分の半分を「少なくとももらえる」として遺産の中で保護されている部分です。
特別受益とは?
また、相続人の間で不平等をなくすために生前に特別の利益を受けていた相続人がいる場合は、遺産分割の際に受け取る財産の「前渡し」を受けていたものとして扱われます。
この前渡しを「特別受益」といい、事業承継のための株式の生前贈与もこれに該当します。
「特別受益」は相続財産に加算されて計算し、生前贈与を受けていた相続人は最終的に相続財産から生前贈与分を差引かれて遺産分割されることとなります。
※2019年7月1日より、もち戻しの期間は、相続開始前10年間にされたものに限るとされました。

特別受益に対する対策
この様に節税対策に株式を生前贈与しただけでは、肝心の株式を後継者に集約できない可能性があります。そこで生前贈与分を相続財産に計上させたくない場合、遺言に「特別受益の持ち戻しを免除する」と記載することで被相続人の意思に従い、持ち戻しをしないようにできる可能性があります。
生前贈与を行う際は、こうした他の相続人の「遺留分」や「特別受益」に配慮して実行しなくてはなりません。
また、中小企業経営主計円滑化法の民法特例を使えば、相続人同士の同意があれば会社株式を遺留分の対象から除外することもできます。
日程 |
日時 | 場所 | 状況 |
▶︎セミナー一覧へ
2019/12/17 |
セミナーお申し込みフォーム