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就業規則の作り方 その1「作成する前の基礎知識」

作成する前の基礎知識


就業規則の作成は、労働基準法第89条に「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない」と記されています。これに違反すると、30万円以下の罰金が科せられます。
労働基準法上の「労働者」は、職業や雇用形態の種類を問わず、会社に使用される、賃金を支払われる者全員が対象となります。
労働基準法は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則の作成と所轄労働基準監督署への届出を義務付けています。一方で、10名未満の会社では、作成届出の義務はありません。
しかし、作成義務のない会社であっても、会社のルールを明確することや無用なトラブルに巻き込まれないために、作成しておいた方がいいでしょう。
労働者の権利と義務を規定したものが就業規則であり、就業規則を作成することが会社を守ることにつながります。

就業規則を作成しないことによるデメリット

就業規則に定めることにより、トラブルが発生した際も、対応できるようになることがあります。

・会社都合での有給休暇を付与できないことがある
従業員が有給休暇を取得したいときは、会社に申し出て有給休暇を取得しますが、従業員の都合で自由に有給休暇を取得すると業務が滞ってしまう場合があります。そのような場合には、有給休暇の一部(有給休暇のうち5日を除いた分)を会社が計画的に付与できます。しかし、就業規則にそのことが明示されていないと、会社都合での有給休暇の付与ができない場合があります。


・従業員の遅刻・欠勤などに関して賃金から控除する場合に明確な根拠がなく控除できない可能性がある
従業員が遅刻や欠勤をした場合、会社は原則、賃金から控除できる権利がありますが、就業規則がなく、賃金計算の根拠が明確でないと、賃金からの控除が行えないことがあります。

・懲戒処分などを行うことができないことがある
従業員の業務の怠慢や法令違反など、会社に不利益を生じさせた場合、訓告や減給、出勤停止、解雇など、懲戒処分を課すことがあります。しかし、就業規則がない場合は、会社は懲戒処分を課すことができません。もし就業規則がない会社で懲戒解雇した場合には、不当解雇として訴えられる可能性があります。

・助成金の申請ができないことがある
雇用関係助成金などは、就業規則の作成や就業規則などに制度を定めることが要件とされている場合があるため、就業規則がないと助成金の申請ができない場合があります。

 

就業規則を作成する際のポイント

■就業規則の作成意義
労働契約の基本は「従業員による労働力の提供」と「企業による賃金の支払い」であり、労働契約の内容となる個々の労働条件(賃金、労働時間、就業の場所など)は、労働基準法(以下「労基法」)などの法令で基準が定められています。常時10人以上の従業員を使用する企業(本店や支店などの事業場単位)は、賃金など主要な労働条件を就業規則に定めなければなりません。
就業規則は会社に必要な職場のルールブックです。就業規則を定めることで職場の規律を保ち、賃金や労働時間をめぐるトラブルが発生した際も対応できるようになることがあります。
また、労働契約法第7条において「合理的な労働条件が定められた就業規則を従業員に周知させている場合は、それが労働契約の内容になる」と定められています。企業は就業規則を従業員に周知することで、基礎的な労働条件を従業員に適用することができるなど、効率的な労務管理を実現することができます。
 
■就業規則を作成する際の留意点
賃金など就業規則で定める事項は労基法第89条で定められています。
基本的な就業規則の内容のひな型は、厚生労働省の「モデル就業規則」などで比較的手軽に入手できますが、会社が就業規則の作成・変更を行う際は、そのままの内容を自社の就業規則として利用するのは注意が必要です。
それぞれの業界、業種も異なりますので就業規則は会社の実情に即したものでなければなりません。
就業規則のひな型は一般的な内容を定めているに過ぎないので、そのまま利用すると問題が生じることが
あります。また、労働関係の法律は頻繁に改正されるので改正に合わせて作成する必要があります。
企業が就業規則を作成する際は、労基法などの基本的な定めを理解した上で、自社の実情に即した内容の就業規則を作成することが重要です。
 
■労基法から見た就業規則
労基法第89条の定め就業規則については、主に労基法第89条で定められています。労基法第89条は次の通りです。
【労基法第89条(作成及び届出の義務)】
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
 一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交 替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当 の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
■就業規則の作成義務
常時10人以上の従業員を使用する企業は、本店や支店などの事業場単位で就業規則を作成し、行政官庁(労働基準監督署)に届け出なければなりません。また常時10人以上とは、常態として10人以上の従業員(パート・アルバイト、契約社員を含む)の事をいいます。派遣されて来ている派遣労働者は派遣元に雇用されているため事業場の労働者には含めません。出向者は出向元と出向先の両方で対象者としてカウントされます。
また、通常は10人以上の従業員を使用しているが時として10人を下回る場合でも就業規則の作成は必要になります。 逆に、通常は10人未満の従業員しか使用していないが時として10人を超えることがある場合は就業規則を作成する必要はありません。
労務管理をめぐるトラブルを回避するためには、常時10人未満の従業員を使用する企業においても「就業規則に準じた書面」を作成することが望ましいでしょう。「就業規則に準じた書面」によって、就業規則とほぼ同様の効果を期待することができます。
 
常時10人以上に含む 常時10人以上に含まない
正社員、パート・アルバイト、有期契約社員、
派遣元における派遣労働者、出向者(出向先、
出向先両方で含める
管理監督者
日々雇入れられる者
季節的業務や臨時的業務に従事する者
派遣先における派遣労働者
役員
 
■就業規則の作成単位
 就業規則は会社ごとに作成義務があるのではなく、事業場単位での作成義務があります。ここで
いう事業場とは、事業を行う一つの場所の事であり、必ずしも会社全体を指すわけではありません。
本社があり、支店や営業所があるような会社は、これらがそれぞれ異なる場所にあれば、それぞれで
就業規則を作成しなければなりません。
ただし、複数の事業場を有する会社で、同一の就業規則を適用する場合は、次の要件を満たせば、一括
して本社の所在地を管轄する労働基準監督署に就業規則を届け出ることができます。
(1)本社を含む事業場の数に対応した必要部数の就業規則を提出すること
(2)本社の就業規則と各事業場の就業規則が同一の内容である旨が附記されていること
(3) 事業場ごとの就業規則のそれぞれに過半数労働組合または過半数労働者を代表する者
の意見書の正本が添付されていること。
事業場については次のような例外もあります。
・場所が離れていても、出張所など小規模で独立性のないもの1つの事業場とみなされる
・同一の場所にあっても、工場内の製造現場と診療所のように明らかに労働の様態(業務の種類)が異なり、独立性が認められるような場合は別の事業場とみなされる
 
■就業規則の記載事項
企業が労働条件を決める際は、労基法などの法令が定める基準を下回らないようにしなければなりません。就業規則で定めるのは、多様な労働条件の中でも日ごろの労務管理で登場する頻度が高い主要なものばかりです。就業規則の記載事項は次の3つに分かれます。
(図表2)【主な就業規則の記載事項】
    項目           概要 主な記載事項
絶対的必要記載
事項
就業規則に絶対に記載しなければならない事項
 
始業・終業時刻、休憩時間、休日、
休暇(年次有給休暇、産前産後休暇)
交替勤務制、
賃金(決定方針、計算、支払方法、締め日、支払日、昇給)
退職(解雇、定年退職)
など
 
相対的必要記載
事項
定めるか否かは自由ですが、定めをする場合には
必ず就業規則に記載しなければならない事項
退職金の対象労働者、決定、計算及び支払方法
支払の時期など、
賞与や臨時に支払われる賃金、
最低賃金に関する事、
労働者の負担する食費や作業用品、
安全・衛生、職業訓練、災害補償および業務外の傷病扶助、表彰および制裁など
 
任意的記載事項
絶対的必要記載事項・相対的必要記載事項以外で、就業規則に記載するか否かは任意の事項 経営理念、目的、制度の趣旨、適用範囲、服装規律など
※絶対的必要事項と相対的必要事項に関する規定はすべて労働基準監督署に届ける必要があります。

就業規則の作成就業規則を作成する際は、絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項が確実に記載されていることを確認しましょう。絶対的必要記載事項や相対的必要記載事項を記載し、関連する人事規程も作成していくと、文章量が増え過ぎてしまい、必要な規程が見つけにくくなってしまいます。そのような場合は、「賃金」「退職金」「育児・介護休業」などに関する定めを、就業規則本体から切り離した別規程にするとよいでしょう。別規程であっても、効力は就業規則本体と同様です。また、賃金や退職金などの事項ごとに個別の規程を定めることで管理がしやすくなります。
 
過半数労働組合などからの意見聴取就業規則を作成あるいは変更した場合は、過半数労働組合(過半数労働組合がない場合は過半数を代表する者)から意見を聴かなければなりません(労基法第90条)。
別規程がある場合は、別規程についても意見を聴きます。
なお、過半数代表者は次の1,2の要件を満たす者でなければなりません。
1.管理・監督者ではない者
2.就業規則について意見を聴取される者を選出することを明らかにした上で実施される投票や挙手などにより選出した者
3.その他、労働者の話合い、持ち回り決議等、使用者の意向によって選出された者ではないこと
・アルバイトや契約社員も含まれる
・病欠、出張、休職期間中の者や、社外出向者など出勤が予定されていない者も含む、出向してきている労働者も含む
・派遣されてきている派遣社員は除く
 
また、使用者は、従業員が過半数代表者であること、過半数代表者になろうとしたこと、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由に不利益な取り扱いをしてはなりません。
過半数労働組合などから意見を聴くことによって、企業が一方的に労働条件を決定することを防止しているわけですが、従業員の同意を得ることまでは求められていません。
 
■管轄の労働基準監督署への届け出
作成・変更した就業規則は、事業場ごとに労働基準監督署用と自社用で就業規則を2部作成し、届出書と意見書(過半数労働組合や過半数代表者の意見を聴いたことを証する書面)を添付して管轄の労働基準監督署に持参か郵送で届出る必要があります。
書面には、従業員代表の署名または記名・押印が必要です。
労働基準監督署は就業規則の内容を確認し、労基法に抵触する定めがある場合は変更命令を出すことになっています。
本社と各事業場の就業規則が同一である場合は、本社で一括で届出が可能です。
一括届出の場合でも部数は事業場数×2部必要で、労働者の意見徴収も事業場単位で行わなければなりません。
 
■従業員への周知義務
就業規則は、従業員に周知されなければ意味がありません。周知されて初めて効力を発生します。
企業は労基法に基づいて作成した就業規則を、企業内の見やすい場所に備え付けるなどの方法で従業員に周知しなければなりません。周知方法は以下の通りに定められています。
  • 従業員がいつでも閲覧できる状態にする
  • コピーなど書面で交付する
  • デジタルデータとして記録、共有
閲覧に許可が必要であったり、金庫に格納する事は不可とされています。
労働契約法に対応するためにも就業規則を従業員に周知することは重要です。就業規則を従業員に周知することで基礎的な労働条件を従業員に適用することができるなど、 効率的に労務管理を行うことができます。
 
■就業規則の効力
就業規則の他にも企業と従業員の間には労働協約などのルールがあり、企業と従業員はこれらを誠実に遵守しなければなりません。
1.労働契約:企業と個々の従業員が交わす個別の契約
2.就業規則:常時10人以上の従業員を雇用する企業が定める規則
3.労働協約:企業(経営側)と労働組合が交わす契約
 
それぞれの効力の強さは、基本的に次のようになります。ただし、就業規則より有利な労働条件の労働契約の場合、労働契約が適用されます。また、労働組合の有無など企業によってケース・バイ・ケースなので、その都度確認する必要があります。
 労働契約 < 就業規則 < 労働協約 < 法令
 
■就業規則の作成時の注意点
(1)法律に触れる規定は認められない
就業規則は、関連法令や労働組合と締結した労働協約に違反してはいけません(労基法第92条第1項)
作成する際には、労務に関連する法律知識を得ておく必要があります。
 
2)就業規則の不利益変更は難しいことを知っておく
就業規則は一度作成すると、労働者が不利益となるような変更を容易に行うことはできません。
就業規則の不利益変更を行う場合には、「合理的な理由」が必要となり、この合理的かどうかの判断は、
次の観点から行われます。
1.就業規則を変更する必要性があるか
2.労働者が被る不利益の程度
3.変更された就業規則の内容の相当性
4.代償措置が取られているか
5.労働組合や労働者との話し合いの経緯
6.同種の事項に関するわが国の一般的状況
就業規則は、一度作成すると不利益な変更をするのは難しいため、現状の経営状態だけではなく、会社
の将来も検討しておきましょう。
 
(3)労働条件の最低基準を定めているか
就業規則とは別に、個々の従業員と企業間で労働契約を結ぶことになりますが、就業規則で定められた最低基準を下回る賃金で、個別に労働契約を結んでも無効となってしまいます。
 
(4)就業規則は周知させていなければ意味がない
判例では、「就業規則に拘束力を生じさせるためには、適用を受ける労働者への周知手続きが
とられていることを要する」とされています。
作成したあと従業員に周知させることで効力を発揮します。
■就業規則作成の手順
(1)現状の把握 就業規則の作成は、企業の現状把握から始めます。
例えば、労働条件としての労働時間 と実際の労働時間を把握し、必要に応じて労働条件を見直します。また、服務規程などについても内容を検討します。
(2)情報収集労基法などの法令、自社が属する業界の賃金水準など就業規則の作成に必要な情報を収集します。
これらの情報は、厚生労働省や都道府県労働局などから入手することができます。取引先金融機関の情報提供サービスを利用するのもよいでしょう。
(3)試案の作成収集した情報を基に就業規則の試案を作成し、「絶対的必要記載事項は全て記載されて いるか」「労基法などに抵触する点はないか」などを確認します。
(4)過半数労働組合などからの意見聴取
就業規則として正式にまとめた後、過半数労働組合などから意見聴取をします。
(5)管轄の労働基準監督署への届け出
就業規則に過半数労働組合などから意見を聴いたことを証する書面を添付し、管轄の労 働基準監督署へ届け出ます。
 (6)従業員への周知
就業規則を企業内の見やすい場所に備え付けるなどして従業員に周知します。
2022/11/28

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