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就業規則の作り方 その9「退職と解雇、賃金」
退職と解雇、賃金

会社と社員の雇用契約が終了するパターンには、退職と解雇の2つがあります。
「退職」には、定年退職、労働者都合の退職、休職期間満了後の退職、死亡退職などがあり、「解雇」には、普通解雇、懲戒解雇、整理解雇などがあります。退職や解雇については労使トラブルになりやすく、就業規則で明確化することは重要です。
■解雇
解雇とは、労働者に対する使用者側からの雇用契約の解除のことを言います。ただし、労働契約法では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。就労規則に明示されていたとしても、客観的な合理性と社会通念上の相当性がなければ解雇は無効となります。
トラブル防止のためにも、会社として、どのような場合に解雇することがあるのか、これを明確化しておかなければなりません。
第○条(解雇)
1.次の各号の一に該当する場合、社員を解雇することがある。
(1)事業の継続が困難となり、事業の縮小、または廃止をするとき
(2)身体または精神の障害により業務に耐えられないと医師が認めたとき
(3)勤務成績が著しく不良で業務に適さないと認められるとき
(4)その他就業規則第○条に規定された服務規律にたびたび違反し、改悛の情が見られないとき
※自動車の運転を主な業務とする会社の場合
(5)自動車運転免許の取り消し処分を受けたとき
■解雇制限
労働基準法には解雇制限として以下の場合、労働者を解雇してはならないと定めています。第○条(解雇制限)
1.次の各号の一に該当したときは解雇しない。
(1)労働者が業務上負傷し、療養のため休業する期間およびその後30日間。ただし、療養開始日から3年
を経過しても傷病が治らず、会社が打切補償をした場合はこの限りでない。
(2)産前産後休業期間およびその後30日間
2.天災地変その他やむを得ない事情により事業の継続が困難となった場合は前項の規定は適用しない。
■解雇予告
労働基準法では、労働者の解雇をする場合、30日前に解雇予告をする必要があります。もし予告ができない場合は30日分以上の平均賃金を支払うことが条件となります。第○条(解雇予告)
1.社員を解雇する場合は、次に掲げる者を除き30日前に解雇の予告をし、あるいは、平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払う。
(1)日々雇用する者
(2)2カ月以内の期間を定めて雇用する者
(3)試用期間中の者であって雇用後14日以内の者
(4)天災地変その他やむを得ない事情により事業の継続が困難となり解雇する場合、または社員の責に帰すべき理由で解雇する場合であり、行政官庁の認定を受けた者
2.前項の予告日数は、解雇予告手当を支払った日数分だけ短縮できる。
解雇には普通解雇、整理解雇、懲戒解雇があると上記に述べましたが、正当な事由でなければトラブルになりかねません。
解雇の手順として、いきなり解雇予告を行うのではなく注意喚起や観察を定期的におこない、それでも問題を起こすなどの行動が見られた時に解雇という選択肢が生まれます。
円満に解雇するためには十分に協議の場を設け、労働者が納得するように説明することが大切です。
就業規則や労働条件に解雇のルールを明記し、解雇する場合に備えて見直しや変更をしておきましょう。
■退職
退職とは労働者と会社との雇用契約の終了することをいいます。退職は解雇と異なり会社から一方的に行うものではありません。また、労働基準法では退職に関して明確な定義はなく、あくまでも労働者の自由とされています。労動者の退職は就業規則以外にも民法が適用されます。民法では労働者は2週間前に申し出れば解雇できることになっていますが、労働基準法では30日以上前に予告をすることが記載されています。
民法より労働基準法のほうが優先されますので就業規則には30日以上前に申し出ることの記載が必要です。
第○条(退職)
1.社員が次の各号の一に該当する場合は、当該事由の発生した日をもって退職とする。
(1)定年に達したとき
(2)死亡したとき
(3)社員より退職願が出され、会社の承認があったとき
(4)期間を定めて雇用された者の雇用期間が満了したとき
(5)休職期間満了日までに休職理由が消滅しないとき
2.社員が自己都合により退職する場合には、少なくとも1カ月前までに会社に文書で退職の申し入れを行わなければならない。
3.退職する社員は、退職日までに業務の引き継ぎ等指示されたことを終了させなければならない。
第○条(定年退職)
1.定年は満60歳の誕生日とし、その翌日に社員としての身分を失う。
2.前項の規定にかかわらず、定年後も引き続き雇用されることを希望し、 解雇事由または退職事由に該当しない
社員については、改めて提示した労働条件にて合意した者につき、再雇用する。ただし、更新は満65歳までとする。
※法改正について
60歳になったからといって、何ら措置も取らずに定年退職させることは違法行為となります。
定年年齢を60歳未満に定めている事業者は高齢者の安定した雇用を確保するため、次のいずれかの措置を実施する必要があります。
・定年制の廃止
・定年の引き上げ
・継続雇用制度の導入
3つの中では「継続雇用制度の導入」を選択している企業が多く、この場合、希望する者については、その全員を継続雇用しなければなりません。ただし、新しい労働条件で継続雇用することは可能です。例外として、心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないことなど就業規則に定める解雇事由、または退職事由(年齢に係るものを除く)に該当する場合は、継続雇用しないことができます。
このときには継続雇用しないことについての客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが必要となります。
■退職・解雇時に労働者が負う義務
従業員の退職・解雇にあたり、以下のような義務が挙げられます。・業務引継義務
・貸与品等の返還義務
・競業避止義務
・秘密保持義務
第○条(貸与品の返還)
社員は、退職または解雇となる場合、社章、健康保険証、その他会社が貸与した品、または仮払いした金銭などの債務を退職日までに返還しなければならない。
社員は、退職または解雇となる場合、業務上の書類、ファイル、データの入った磁気、名刺などすべての書類を会社に返還しなければならない。
第○条(退職時の証明)
1.会社は、退職する予定あるいは解雇される予定の社員、または退職した社員あるいは解雇された社員から退職証
明書の交付を求められたときは、速やかにこれを交付する。
2.前項の証明事項は、使用期間、業務の種類、会社における地位、賃金、退職または解雇の理由とし、本人が請求
した事項のみ記入するものとする。
第○条(退職後の競業禁止)
1.役職が部長以上の幹部社員に関しては、退職後2年間は、本社の所在するエリア内における同業他社への就職、役員就任、同業の自営を行ってはならない。
2.前項を適用する社員とは、別途誓約書を締結する。
第○条(退職後の秘密保持義務)
1.社員は退職後も在職中に知りえた会社の機密および個人情報を第三者に漏らしてはならない。
2.会社の重要な機密に関わった社員に関しては、別途誓約書を締結する。
従業員は業務内容の引継ぎや、社員に貸し出していた備品の返却、会社の重要情報についても守秘義務があります。会社の機密が漏洩しないように就業規則で明確化します。
退職後の競業については、すべてが禁止できるわけではなく、「競業制限の期間、場所的範囲、制限の対象となる業務の範囲、代償の有無などに照らして、競業制限が使用者の正当な利益を保護するために必要な合理的範囲を超えないことが求められる」とされています。
■賃金
就業規則の賃金は絶対的必要事項になります。
一般的には就業規則と分離させて「賃金規定」として作成することが一般的です。
第○条(賃金) 社員の賃金に関しては別途賃金規定を適用する。
| 2022/11/28 |

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